2025年4月1日から、インターネット上で発生した誹謗中傷に対して、書き込みが行なわれたSNSの事業者に対して被害者への迅速な対応を求める改正法が施行されました。
この改正法が施行されたことにより、SNSなどのインターネット上で誹謗中傷を受けた人への救済が今まで以上に素早く進むことが期待できます。
しかし、この改正法に対しては一部のSNSユーザーから「政府による言論弾圧につながる」「SNSを規制しようとしている」といった声が上がっています。
果たして、この法改正は政府による言論弾圧・SNSの規制につながるものなのでしょうか。
今回は、SNSの誹謗中傷を対策するための法改正について、探偵の目線から解説していきます。
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インターネット上のひぼう中傷などの投稿について、SNSの運営事業者に対し、被害を受けた人への迅速な対応を求める改正法が4月1日に施行されました。事業者への対策の強化で被害を減らすことができるかが課題となります。
SNSなどインターネット上でのひぼう中傷の書き込みをめぐっては、被害を受けた人が削除を求める際に申請窓口がわかりにくいなど、事業者の対応が不十分だと指摘されています。
このため、1日に施行された改正法では、事業者に対し、ひぼう中傷など権利の侵害があった場合に投稿の削除の申し出を受け付ける窓口を整備するほか、削除の申し出があった場合、速やかに調べて7日以内に判断して被害者に通知することを求めています。
引用元:「SNS規制」「政府による言論弾圧」不正確な情報が拡散 情報流通プラットフォーム対処法とは?誹謗中傷対策 | NHK | フェイク対策
SNSが登場して15年近くが経過し、今や情報の取得だけでなく一個人による情報発信のツールとしてもSNSは大きな存在感を持っています。
しかし、誰でも自分から情報を発信できるようになった反面、他人を攻撃する内容の発言も容易にできるようになってしまいました。
このようなインターネット上での誹謗中傷に対する対策は、なぜ拡充する必要があったのでしょうか。
SNSは2000年代後半頃から登場して世界中で拡大を始め、国内ではmixiといったサービスが人気を集めていました。
その時点でのSNSは登録に招待が必要であったりとまだ「閉じたコミュニティ」のような一面を持ち、趣味趣向を同じくする人たち同士が関わりを持つためのツールとして使われていました。
2010年頃から普及し始めたTwitter(現:X)には今までになかった「拡散性」が付与され、書き込みがユーザーの手でどんどん拡散されることで全世界に情報を発信することが可能になりました。
2011年の東日本大震災の時には、Twitterを経由して災害情報の発信や安否確認、救援物資の要望といった情報が広まることで、災害援助にも役立つツールであることが広く知れ渡り、ユーザー数の拡大にもつながりました。
しかし、この「拡散性」は関心がないだけでなく見たくもないネガティブな情報にも触れる機会をもたらすことにもなってしまいます。
特に近年のTwitterおよび経営者が変わって「X」と改名された後には、ユーザーの興味関心をリサーチしておすすめの投稿を表示する機能が備わりました。
ですが、このおすすめ投稿表示機能によって一度ネガティブな情報に触れてしまうと、その後も関連する同様のネガティブな投稿が表示され続けることになってしまい、一部ユーザーの反感につながっています。
このおすすめ投稿表示機能が導入されて以降、「SNSで対立煽りが強まっている」と感じる人も増えており、このような違う立場の人同士での言い争いが発展して、誹謗中傷の書き込みの発生に結び付いているのが現状です。
SNSが登場してから2010年代前半まではまだまだガラケーを使用する人は多く存在し、特に小中高生やお年寄りといった家族との連絡を取るためだけの機能が必要な人たちはガラケーを使い続けることが多い状況でした。
しかし、通話アプリ「LINE」の普及やガラケーのサービス終了が相次いだことから小中高生やお年寄りもスマホを手にすることが急増しました。
多くのスマホにはSNSアプリがデフォルトでインストールされているため、スマホを手にするだけで誰もがSNSを使える状況となっていました。
その結果、まだ精神的に成熟していない子どもたちがSNSを使用することでトラブルに巻き込まれたり、ネットリテラシーを身につけていない高齢者層がSNSの書き込みに過剰に反応するといったことが多発しました。
このように、閉じたコミュニティだけだったSNSが拡大したことにより、これまでインターネットに触れることのなかった年齢層の人も情報の取得や発信ができてしまい、誹謗中傷などのトラブルに遭うことになっていきました。
今回のインターネット上の誹謗中傷対策の法改正により、一部では政府による言論弾圧・SNS規制が起こるといった言説が巻き起こっています。
果たして、このような懸念が現実になる可能性はあるのでしょうか。
そもそも、今回施行された改正法の趣旨としては、SNSの運営会社に誹謗中傷など他者の権利を侵害する書き込みに対して、削除などの対応をこれまで以上に速やかに行なうことを義務付けるためのものです。
そのため、総務省の見解としては懸念されているような言論の弾圧や統制であったり、SNSに規制をかけるものではないと説明されています。
また、規制の対象になる書き込みの種類を増やすわけでもなく、あくまで求めているのは従来以上の素早い対応なので、規制範囲を拡大して取り締まりを強化するわけでもありません。
今回の改正法について危機感を煽ってくる書き込みを見ても、鵜呑みにはせずに冷静に考えて解釈することをおすすめします。
インターネット上の誹謗中傷対策の改正法が施行されたことで、今後どのようなことが起きるのでしょうか。
まず第一に想定されるのは、他者の権利を侵害する書き込みに対する運営会社からの対処が今まで以上にスピーディになることです。
従来であれば、誹謗中傷の内容が含まれる書き込みを通報したり削除申請したりしても、運営会社が要望を聞いて対処するまでにタイムラグが発生して、その間も該当する書き込みの閲覧や拡散が増え続けて余計な被害が起こっていました。
しかし、法改正によってより素早い対応をSNS運営会社に要求することで、従来よりも素早い書き込みの削除や投稿したアカウントの凍結が期待できるようになるでしょう。
また、投稿を通報した人へ削除の可否の通知も一定期間の内に行なうことが規定されたため、誹謗中傷への対処の状況もユーザーがより簡単に把握できるようになりました。
加えて、削除したコンテンツの内容な数も公表するようになっているため、SNS運営会社による対処がより透明性を持ったものになる期待が持てるでしょう。
監修者・執筆者 / 山内
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。 得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。 監修者・執筆者一覧へ
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