
ストックホルム症候群とは、誘拐や監禁といった極度のストレス状況下で、被害者が加害者に対して好意や共感を抱くというものです。
この人間の心理を逆手に取った事件が勃発。
被疑者7人は暴行を加える悪い役と、食事を提供するいい役に分かれ、飴と鞭のような構図をつくり、被害者を支配しようとしていたと見られています。
本記事では、ストックホルム症候群がもたらす心理状態の変化や、この症候群から抜け出すための方法も解説しています。
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事件の発端は2024年。大城容疑者が社長をつとめる建設会社と、工事を発注した男性の会社で起きた“金銭トラブル”だった。
このトラブルがきっかけとなって2025年1月、大城容疑者らが男性を拉致・監禁したという。監禁場所を転々とし、2月上旬には男性を茨城県の山に連れて行き、「殺す、山に埋める」と、殺害をちらつかせる発言をしていたという。
監禁は、実に3か月間。
(中略)
男性はこうした環境のトランクルームに合計2回、それぞれ約20日間監禁されていて、食事は2日に1回程度しか与えられていなかったという。
警視庁によると、男性は容疑者に、金づちで指をたたかれたり、熱湯をかけられたりするなど、継続的に暴行を加えられていたという。
しかし、男性が保護された直後、「悪いのは私なんです」と、数日の間、大城容疑者をかばうような証言を続けていたという。
捜査関係者によると、いわゆる“ストックホルム症候群”に近い状態に陥っていたという男性。
引用元:3か月“監禁”暴力と支配…男7人逮捕 被害男性“ストックホルム症候群”か【バンキシャ!】(2025年07月21日)

ストックホルム症候群の心理的メカニズムは、極度の心理的ストレスや生命の危機にひんした状況において、人間の生存本能として機能する心理状態を指します。
これは病名ではなく、特定の心理現象を説明する概念です。

被害者は、誘拐や監禁、虐待など、自身が置かれた状況で加害者に嫌われると命の危険があると感じる際の適応行動として、ストックホルム症候群に陥ります。
目の前の危機を回避するために加害者に好意を抱いたり、心理的な絆を持とうとしたりするのです。
この好意は、本心から抱かれるものになります。
「フリ」では見破られる危険性があるため、無意識のうちに「本気で」加害者に好意を抱いたり、特殊な絆を持ったりします。
これは、心理的、身体的な危険から自分を守るための適応行動と言えます。

被害者は、加害者からのわずかな優しさや配慮、あるいは非暴力的な言動を大きな救いとして感じ、これが愛情や感謝の感情、さらには共感へと発展します。
長時間の密なコミュニケーションを通じて、被害者は加害者の置かれた状況、問題、願望、夢などを理解しようと努め、それによって同情し、加害者側の視点を受け入れるようになることがあります。
加害者の攻撃性に絶対的に依存する中で、被害者は加害者のあらゆる行動を肯定的に解釈し、正当化し始める傾向もあるでしょう。

感情的な混乱の中で被害者は、幻想的な安心感を抱くことがあります。
被害者は、自分を救うために外部から取られる措置(警察の突入など)が、かえって自分の命を危険にさらす可能性があると無意識的に理解し、加害者の側に立つ方が安全であると判断することがあります。
自らの置かれた状況を受け入れ、適応しようとする心理的防衛機制が働き、加害者への依存の感情が強化されるのです。
自己防衛のため、自分の意見が加害者の意見と完全に一致するようになり、すべての責任を自分自身に負わせようとする傾向が見られます。
例.「私が彼をこんな風にさせ、挑発しているのだ、私のせいだ」

ストックホルム症候群と洗脳状態のメカニズムの類似性は、まるで迷子になった子供が、唯一の生存手段であると信じて、自分を誘拐した人物に「心から」ついていくようなものです。
これらのメカニズムの類似点を解説していきます。

加害者を法律を犯した人物ではなく、問題を抱えた「普通の人間」として認識し、その行動を肯定的に解釈し、正当化し始めます。
被害者は加害者の視点や意見を「絶対的に正しく論理的である」と確信するようになり、自身の意見が攻撃者の意見と完全に一致するようになることもあります。
これは、洗脳状態において対象者の世界観や価値観が歪められ、特定の思想や信念が植え付けられる過程と類似しています。

ストックホルム症候群の事例では、警察などが共通の敵となることで、被害者と加害者の間に特殊な一体感が生まれることがあります。
また、外部からの支援を拒み、自らを孤立させることもあります。
洗脳状態においても、対象者を外部の情報や社会関係から隔離し、支配者からの情報のみに限定することで、思考の自由を奪い、支配を強化する手法が用いられます。

ストックホルム症候群から抜け出す鍵は、まるで迷路の出口を見つけることに似ています。被害者は、加害者との関係が唯一の「安全な道」だと無意識のうちに思い込んでしまっているため、迷路の中にいることに気づきにくいのです。
この迷路から脱するためには、以下のような方法が効果的です。

ストックホルム症候群からの回復の第一歩は、自分が置かれた状況による真の被害を自覚し、自身の行動の非合理性を評価することです。
「ほとんど全てが無意識によって起きている」ため、被害者自身が自分の行動の本当の理由を理解していないことが多いです。
そのため、これは特殊な状況だから起こった普通の反応だったのだと理解することが大切です。

ストックホルム症候群の影響を受けた場合、専門家による心理カウンセリングやサポートが極めて重要です。
多くの被害者は自分が何らかの病状を抱えていると自覚している人がほとんどいないため、薬物療法が必ずしも適切であるとは限りません。
そのため、認知療法やカウンセリングなど、心理療法が有効な治療法となり得ます。

ストックホルム症候群における心理状態の変化は、まるでカメレオンが環境に適応するためにその体色を劇的に変えるのと似ています。
生存という究極の目的のために、本来の自分とは異なる色(感情や認識)を帯び、外界の脅威から身を守ろうとするのです。
その変化は無意識のうちに進み、最終的には自分自身が何色であるかさえ分からなくなってしまうほどです。
探偵であれば、客観的証拠収集を行い、被害者の本来の色を取り戻すための手助けができます。
もし周囲でストックホルム症候群に陥っている人物がいるときは、一度ご相談ください。

監修者・執筆者 / 山内
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。 得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。 監修者・執筆者一覧へ
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